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自己破壊同盟

自己破壊同盟

夢日記 5月2日

 吹きすさぶアメリカの夜風を受け、深夜の寂しげな車道を独りで歩いていた。周囲は疎らで、暗く、人気はない。これといって注意を引くものと言えば、時々車が走り過ぎていく外はこの凍てつく寒さばかり。どこにも行くあてなんかなかった。私は軽率に家出してきたことを今更に後悔しはじめている、十代の少年だった。右手にゴミ置き場を見つけると、すぐに足が向いた。そこに、低い石の台が、ゴミの分別用にいくつか扉つきでわずかな空間を設けられており、狭くて屋根がないものの、いくらか風除けになると思ったからだ。さっそくそのうちの一つを開いた。ゴミ袋もポリバケツもない。もちろん、あれば放りだしただろう。中にうずくまり、身を縮込ませた。できればここで夜を明かすつもりでいたが、あまりの寒さにふるえ通しでとても寝られたものではない。
(これからどうしよう?)
 ほんの数秒間が何年間にも感じられた。車の行き交いを名残惜しむように見つめる。私にはその光景しか残されていない。ひたすら何かを待ち続ける。暖かな日の出は当分おあずけ。こうして夜風にふるえているしかない。それからさらにどれくらい経ったのか、いや、そう思い込んでいただけかもしれない。硬直しきった視界の中に、再びライトが飛び込んできた。見ていると不意に、その車が目の前で止まった。パトカーだ。とっさに頭を下げて身を隠す。パトカーから一人の婦人警官が降りて近づいてくる。そしてあっけなく見つかる。婦人警官は髪を男のように短くカットしていた。すぐに私を前に立たせ、尋問する。けれど何を訊かれたかは憶えていない。ただ、銃口を向けて何故か脱衣を指示した。私は何も携帯せずに家を飛び出してきたのだから、当たり前のように何も出てこない。すると今度は、裸でふるえている私に銃を突きつけたまま、後ろの地面の鉄格子を開け、その四角く穿った狭い穴に頭から逆さに入るよう脅す。穴の深度はちょうど私の背丈くらいで、仕方なく言われるままに入ると、両腕で体全体を支えねばならなかった。すぐに力を消耗してしまい、息切れがした。
(もうだめだ、誰か助けて!)
 いったい何の因果でこの寒空の下、裸で逆立ちしていなければならないのか?婦人警官は上から軽蔑するような目つきで覗き込み、嘲笑しつつ私のケツに唾を吐いた。そして一生そうしてろとでも言わんばかりに、踵を返し、私を放ってパトカーを走らせた。
 その遠ざかっていく音を聞き流して途方に暮れていると、影で一部始終をうかがっていたらしい男が、先の女が消えたのを見計らって穴から引きずり出してくれた。彼はここの管理責任者であるらしい。私はすぐに服を着ると、急いで家に帰っていった。


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